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2022.01.16
院長ブログ

院長読書日記② 2021年に読んだ小説

   

2021年に私が読んだ小説の中で、とりわけ印象的だった作品

ひきなみ:千早 茜著

小学生、夏休み、海、島とくれば、爽やかな青春物語を予想してしまうが、 瀬戸内の島の美しい描写とは対照的に、少女2人を取り巻く家庭内外の環境 は厳しい。それでも2人はそれぞれ自分らしく成長していくところに心打たれる。 大人編(2部構成)になってからも、主人公の生きていくことの困難さは苛烈を 極めるが、理不尽と戦うことを決意する勇気をもらうことで希望の光を見出す。

この作品には私にとって、小説の楽しみのほとんどすべてがある。

檸檬先生:珠川 こおり著

この作品もまた、小学生の夏休みに多くのページを割くが、作品全体を通して 人間関係や感覚的差異(共感覚)など、楽しさより生きずらさを主題としている。 しかしながら特筆すべきは、この作者が小学3年生の男の子の視点をリアリティ を感じるほどに獲得していることで、色彩豊かで手垢にまみれていない少年 の感性とその成長を鮮やかに描いている。 これは子供と大人の狭間の18歳にしか書けない小説なのかもしれない。